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結婚周回
「これからもよろしくね、あなた」
三十代後半ほどの見た目をした女性は、ソファの隣に座っている夫に話しかけた。今日は結婚三周年。しかし夫は寡黙な性格ゆえ、口をしっかりと閉じ、腕を組んで喋ろうとしなかった。
「......ねぇあなた。そろそろその性格直しなさいな。だからお仕事がうまくいかないのよ? 」
女性がそう問いかけるが、夫は頷きもせずに
「あぁ......」
と言うばかりだった。
「わかっていないくせに......」
女性は夫から視線をそむけ、分かりやすくふてくされた。しかしそれでも、夫は女性を気にかけなかった。視線を動かさず、前だけを見つめている。
「それにあなた、最近臭うわよ。加齢臭ってやつなんじゃない? もうしばらくお風呂に入っていないからね」
夫の体は赤黒い液体が張り付いており、それが腐って臭いの元となっていた。
「包帯もそろそろ替えましょうかね......あら、ネバついてる」
包帯を触ると、染み込んでいた粘液が糸を引いた。そして女性は独り言を言った。
「そろそろあなたとは、お別れかしらね」
女性の目線の先には、全身に血の染み付いた包帯が巻かれている男性の死体があった。
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