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樹が勤めるカフェは公にはしていないが従業員は全てオメガだ。
オメガが一般企業に勤める事が難しいのはヒートの際に働けないこと。
3か月に1度、個人差はあるが一週間程働けない期間が必ず訪れるため、その間を穴埋めするのはアルファやベータがすることになる。
オメガが職場にいる限りそのしわ寄せが来るため、オメガは職場に望まれない存在なのだ。
しかしオメガしかいない職場ならヒートのオメガの穴埋めをするのもオメガの仕事となる。
困った時はお互い様、自分の時は他のオメガが穴埋めしてくれるのだから、他のオメガがヒートでシフトに入れないときにその穴埋めに入る事に不満をもつ理由もない。
更にオメガしかいない職場の利点はヒートが来た時だ。
ホルモンバランスの乱れ等で予定外にヒートが来てしまった際も、バックヤードへ下がればそこにいるのはオメガだけ。
アルファのいる職場ならヒート時に出るフェロモンで同僚のアルファをラットにさせてしまい襲われる危険性もあるが、オメガしかいなければその危険もなくなる。
「従業員が全てオメガなカフェ」な事が知れ渡ると良からぬ事を考えるモノが現れないとも限らないためその事はなるべく外には出さないようにしている。
従業員が着る制服はオメガが望まぬ番になる事を避けるために付けるネックガードが隠れるよう、襟が高く項が見えないようデザインされている。
更には店内の空調の風向きも、レジの中にいるオメガのフェロモンが極力もれないように計算されて設計されているのだ。
給料は決して高くはないが、ほとんどのオメガが定職に付けずにフリーターとして生活してる事を考えれば「正社員」として雇用してもらえるこのカフェはオメガにとっては天国のような職場なのだ。
今はまだ都心に一店舗しかないが、悠斗は「いずれは全国展開したいんだよね」と夢を膨らませている。
試験的に運営が開始されたそのカフェでマネージャーとして雇われた樹は、急遽ヒートが来てしまった為に休みを取らせたオメガの代わりにレジに入った際に「運命」と出会ってしまったのだ。
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