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三島くんの消しゴム
「あ、どうしよ……」
消しゴム忘れちゃった。昨日家で宿題してたときに置いてきちゃったかな。
「お、どうした日野原?」
隣の席から三島くんが声をかけてくる。
「あ、三島くん。今日消しゴム忘れちゃって。よかったら授業中貸してもらってもいい?」
三島くんは親指でグーとこっちに向ける。
「おう、もちろんいいぞ! 返すの、授業全部終わってからでいいからな」
「え、でも三島くん困らない?」
「だいじょぶだいじょぶ、俺二つ持ってるし」
そう言って三島くんは笑顔で消しゴムを貸してくれる。
「ありが、と……」
貸してもらった消しゴムを見たら、イチゴの形の、しかも匂い付きの消しゴムだった。
「三島くん、こういうの使うんだ……」
何か意外。
でもかわいいかも。
今日の授業が終わって三島くんに消しゴムを返す。
「はい、三島くん。ありがとう。三島くんってこういう消しゴム使うんだね。ちょっと意外かも」
「ああ、それは日野原が忘れたとき用に……」
言いながら三島くんの顔がみるみる赤くなる。
「……へえー、私が忘れたとき用に?」
「……忘れてくれ」
そう言って机に突っ伏した三島くんの顔はイチゴみたいに真っ赤になっていた。
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