1426人が本棚に入れています
本棚に追加
結婚報告
私と葵さんが隣り合って座り、向かいには兄が座る。
私たちは机を挟んで向かい合っていた。
今日は結婚報告のため、2人で兄の家を訪れていた。
いつものぽやっとした姿からは一変。
先ほどから、兄はむっつりとした顔で黙り込んでいる。
「……ということで……私たち、結婚することになりました」
私の言葉に、兄が顔を上げる。
「……葵さん」
重々しく呼ばれた名前に、私まで思わず居住まいを正す。
「貴方には、この先何があっても天音を守り、添い遂げる……その覚悟がありますか?」
葵さんは、真剣な表情で口を開いた。
「もちろん。
俺は天音を愛し続ける。そして陸斗と鈴……家族全員を守り、幸せにする。
この先の人生をかけて誓うよ」
「……そうですか。貴方の気持ちは分かりました」
兄は何度か頷いた後に顔を伏せる。
「お兄ちゃん……?」
再び黙り込んでしまった兄に、声をかける。
その肩は小刻みに震えていて。
次に顔を上げた兄の瞳からは、たくさんの涙が溢れていた。
「……もうダメだぁ……」
蛇口が決壊したような大号泣にギョッとする。
「あまねぇぇぇ……幸せになるんだぞぉぉぉぉ……!」
けれどすぐに、それが兄の祝福の証なのだと気づいた。
「ありがとう……お兄ちゃん」
最初のコメントを投稿しよう!