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兄は涙を流したまま、葵さんに向き直る。
「葵さんも、天音のことよろしく頼みます……!
天音は俺の大事な、大事な妹なので……!」
「ああ。そんな大事な宝物を貰い受けるんだ、何よりも大切にしないとな」
葵さんの手が、そっと私の手に重なった。
葵さんと目があって、照れ臭さを感じながらも笑みが溢れる。
「改めて、2人ともおめでとう。
……喜び反面、溢れ出る寂しさ……これが娘を嫁にやる父親の気持ちなのか……」
そう呟く兄は、相変わらず涙が止まらない。
「もう、お兄ちゃん泣きすぎだよ」
「……天音ぇ……」
ティッシュを差し出すと、チーンと鼻をかむ兄。
「あんま泣くと目が腫れますよ、お義兄さん」
冗談めかした葵さんの発言に、しかし涙はぴたりと止まって。
「……お義兄さん……俺が、葵さんの……いや間違ってはないけど、なんか複雑……!」
本当に複雑そうな顔で唸る兄に、葵さんと一緒になって笑いが溢れた。
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