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結婚が決まってから、葵さんと鈴ちゃんの住むマンションに私たちが引っ越す形で、一緒に住み始めた。
「毎日天音ちゃんといっしょにいれるなんて夢みたい」
鈴ちゃんはそう喜んで、家事のお手伝いなんかも積極的にしてくれる。
陸斗は最近、毎日のように葵さんと一緒にお風呂に入っている。
浴室から響いてくるのは、新しく買ったお風呂用おもちゃで遊ぶ楽しげな声。
たまにはママと入ろう?と誘っても、「葵さんがいい」と振られてしまうのが少し寂しかったりもする今日この頃だ。
髪の毛を手櫛で整えてから、葵さんに尋ねる。
「どこか変なところないかな?」
「大丈夫。そんな気負わなくていいって」
「そうはいっても、やっぱり緊張が……」
手土産入りの紙袋の持ち手を握りしめる私を励ますように、鈴ちゃんが明るく言う。
「おばあちゃんは優しいから大丈夫だよ!」
葵さんと手を繋いだ陸斗が、緊張に震える私のことを不思議そうに見上げていた。
この間は私側だったから、今回は葵さん側。
つまり葵さんのお母さんの元へ、結婚報告の挨拶に訪れた。
葵さんのお母さんが住むのは、とあるオートロック付きマンションの一室だった。
自宅からは小一時間ほど車を走らせたところに位置している。
エントランスを抜けて、葵さんの後に続いていけば、ついに扉の前に辿り着く。
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