幸せにします

1/8
1315人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ

幸せにします

「みんなー早く早く! 見て!こっちすごいんだよ!」 興奮を隠せない様子で声を弾ませながら、手招きをする鈴ちゃん。 「鈴、あんまり慌てると転ぶぞ」 注意を促す葵さんと共に、私と陸斗も後に続く。 「見てりーくん! お城があるよ!」 「あったー!」 そして4人が揃った状態で、メインシンボルとなるお城を見上げた。 鈴ちゃんと陸斗が一緒になってはしゃいでいる。 葵さんと目が合って、自然と笑みが溢れた。 鈴ちゃんがくるりと振り向く。 「お父さん、天音ちゃん! 今日はたーくさん遊ぼうね!」 今日は、私の24歳の誕生日。 そのお祝いも兼ねて、みんなで夢の国と称されるテーマパークへ訪れていた。 ちなみにチケットは兄からの誕生日プレゼントだ。 まずは鈴ちゃんの提案で、キャラクターを模した被り物を選びに行くことになった。 「天音ちゃん、これどうかなぁ?」 鈴ちゃんがカチューシャの一つを手に取り、頭に当てながらこちらを見る。 「……かわいい……! 似合ってるよ!」 キャラクターの耳がついたそのカチューシャは、鈴ちゃんの愛らしさをより引き立てていた。 「うーん、でもこっちもいいかも……」 「それもかわいい……!」 新たに手に取った帽子タイプのそれもよく似合っていて、即答で頷く。 「じゃあ、これ。りーくんとお揃い!」 「お揃い!」 次は鈴ちゃんと陸斗が同じカチューシャを頭に当てる。 「……かわいい……っ」 「もー天音ちゃん、さっきからかわいいしか言ってないよ」 鈴ちゃんが少し呆れた様子で言う。 「だって本当にかわいいから……」 心の声がダダ漏れとなっていた私の肩が、トントン、と叩かれる。 振り向くとそこには、リボンとフリルのカチューシャを頭に当てた葵さんがいて。 「あれ、俺にはかわいいって言ってくれねーの?」 そう冗談めいて言う。 その外見とファンシーなカチューシャの、何とも言えないミスマッチ感。 「ええ、お父さん似合わなーい!」 鈴ちゃんの正直な反応に、吹き出すように笑ってしまった。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!