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やつれて青白い顔色に乗せられた濃い化粧は妙に浮いて見えて、
目だけがギラギラと光っている。
正直今のスミレさんからは、以前のような美しさが感じられなかった。
そんなスミレさんの目が、ギョロリと私を捉えた。
「……だからね、天音さんだっけ?
あなたには身を引いてほしいの」
「……身を引く?」
「そう。葵と別れて、鈴とももう関わらないで欲しいってこと」
この人は、自分がどれだけ身勝手なことを言っているか分かってるの?
絶句する私をよそに、スミレさんは続ける。
「だって鈴に聞いたけど、あなたたちって入籍はまだなんでしょう?
ならまだ間に合うじゃない!
葵ってば、昔よりももっとカッコ良くなっちゃってさぁ。
やっぱり私には彼しかいないのよ」
指輪の光る左手を、私はぎゅっと握り込んだ。
「それはできません。
私は葵さんと別れるつもりも、鈴ちゃんと離れるつもりもありません!」
「何よ、いっちょまえに鈴の母親にでもなったつもり?
あんたなんて所詮ニセモノのくせに!」
スミレさんは苛立った様子で言って、それから鈴ちゃんの名前を呼んだ。
「ねえ鈴?
鈴は私……本当のママの方がいいよね?
ママとパパ、みんなでまた一緒に暮らそう?」
「………」
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