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そんな姿を見ていて思う。
この人はきっと、過去に葵さんたちにしたことに対して、後悔も反省もしていない。
ただ寂しいから、自分が1人になりたくないから……都合のいい言葉を並べ立てて、いつも誰かを利用しようとする。
そんなところは、かつてのあの人たち……浩一や百合花にそっくりだ。
その時、場の空気に似つかない、どこか間の抜けた通知音が響いた。
発信源はスミレさんのスマホからのようだった。
すすり泣きを続けながら、片手でスマホに手を伸ばすスミレさん。
「……えっ」
しかし画面を見た途端、その涙がぴたりと止まる。
「えっえっ嘘……!」
画面を食い入るように見つめながら、興奮したように声を漏らす。
すると今度は着信音が鳴り響いて、スミレさんは間髪入れずそれを受けた。
「もしもし……まぁくん?」
まぁくん……?
「でも、今更そんなこと言われたって……!」
突然の出来事を見守るしかない私たちをよそに、スミレさんは電話先の相手と喋り続ける。
「もう、しょうがないなぁ。
まぁくんは、私が支えてあげないとダメなんだから……!」
はじめは怒ってはずの表情が、徐々に喜びに変わっていった。
「やっぱり私もまぁくんが好き……まぁくんじゃないとダメなの……!」
それ、ついさっきも聞きましたけど。
「うん、うん……愛してるよ、まぁくん」
その言葉を最後に電話が終わる。
「……やっぱり、さっきのことは取り消しでいい?」
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