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「私をうんだあの人……ママに、もういっかい一緒にくらそうっていわれた時、なんとなくだけど思い出したの。
ママと一緒にいたときは、いつもさみしくて……ひとりぼっちだった」
当時はまだ幼くても、ネグレクトを受けていた記憶は心のどこかに残っていたんだ。
ベッドの端で、葵さんが少し眉を寄せたのが分かった。
「周りの子にはお母さんがいるけど、私にはいなかったから、もしお母さんがいたら……ってかんがえたことがあるんだ。
お母さんの作ったご飯やおやつを食べて、お話を聞いてくれて、いろんなことで一緒に笑ったりして。
私が思う、お母さんがいたら……それを叶えてくれたのは、全部天音ちゃんだったんだよ」
鈴ちゃんは真っ直ぐに私を見る。
「だからね……天音ちゃんが“大事な娘“っていってくれて、うれしかった」
「……鈴ちゃん……」
血が繋がっているわけではない。
葵さんとの婚姻届もまだ出していないし、戸籍的には私たちはただの他人だ。
でも私たちは、互いが互いをかけがえのない家族だと思っている。
「私も……鈴ちゃんが、お母さんは私だけって言ってくれて、すごく嬉しかった」
私の言葉に、嬉しそうに鈴ちゃんが笑う。
「私たち、両想いだね」
「そうだね、両想いだ」
寝転んだまま、鈴ちゃんがぎゅっと抱きついてくる。
「これからもずっとずっと、みんなで一緒にいようね」
「もちろん……!」
私は腕の中の愛しい存在を、大切に抱きしめた。
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