私のお母さん

24/24

1335人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
私の腕の中にいる鈴ちゃんが、顔だけで後ろに振り返る。 「それに今日は、お父さんが天音ちゃん大好きってこともよーく分かったよ」 「当たり前だろ」 しれっと答える葵さんは、それからふわりと微笑んだ。 「天音も鈴も陸斗も、家族丸ごと世界一愛してるよ」 葵さんが手を伸ばし、鈴ちゃんの頭をわしゃわしゃと掻き乱す。 「いやー明日寝癖になるー!」 そう言いながら鈴ちゃんは嬉しそうに笑って。 「……ぅ……」 そんな時、熟睡していたはずの陸斗がもぞりと動いた。 「お……起こしちゃった?」 鈴ちゃんははっと声をひそめて、みんなで陸斗の様子を伺う。 「……どーなつ……」 言葉と連動するように、陸斗の口がむにゃむにゃと動いた。 「……寝言?」 「りーくん、夢の中でもドーナツ食べてるのかな?」 今日は、夕飯後に手作りドーナツをデザートとして出していた。 陸斗はそれをとても気に入って、満面の笑顔で完食した。 「そうだろうな。見ろよこの幸せそうな顔」 葵さんの言う通り、陸斗は幸せそうな顔で眠っていて。 未だにむにゃむしゃと動く口端からは、今にもよだれが溢れそうだ。 「陸斗ってば、夢の中でも食いしん坊なんだから」 私の言葉に、吹き出すみたいに葵さんと鈴ちゃんが笑って。 「んじゃ、俺たちもそろそろ寝るか」 葵さんの言葉を合図に、豆電球にしていた照明を完全に切る。 「おやすみなさい」 スミレさんの一件で曇っていた心は、すっかり幸せに塗り替えられていて 私たちは身体をぴたりとくっつけ合って眠りについたのだった。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1335人が本棚に入れています
本棚に追加