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私たちの結婚式
「お支度終わりましたよ」
鏡に映るのは、純白のウェディングドレスに身を包んだ私。
プロの手によってヘアセットとメイクが施され、まるで自分じゃないみたい。
ノックの音が聞こえる。
緊張と共に返事をすれば、ゆっくりとドアが開かれた。
「天音」
中に入ってきたのは、タキシード姿の葵さんだ。
葵さんは鏡の前に座る私の前へやってきて、その場に跪く。
葵さんは顔を上げて、ドレス姿の私を見つめる。
「……綺麗だ……」
これが、私たちの“ファーストミート“だった。
葵さんは、瞬きも忘れたように私のことを見つめ続けている。
「……あまりに綺麗すぎて、言おうと思ってたことも全部すっ飛んだ」
「ありがとう……葵さんも、タキシードすごく似合ってる」
今日は、私たちの結婚式の日だ。
葵さんの手をとって、私はゆっくりと立ち上がる。
「これが俺の花嫁だって、世界中に自慢して回りたい気分」
待ち望んでいたこの日を迎えられたこと。愛おしげに私を見る葵さんの姿。
込み上げる気持ちに、早くも目に涙が滲んだ。
メイクさんからは、泣いてもいくらでも直してあげると力強い言葉をもらっている。
これは早速お言葉に甘えてしまうかも。
そんな私のことを、葵さんが抱きしめる。
「可愛くて綺麗で、最強の花嫁だな」
「それを言うなら葵さんだってカッコよくて綺麗で、最高の花婿さんだよ」
私たちは額を合わせて微笑み合った。
―――これから、私たちの結婚式が始まる。
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