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夜になると、葵さんが予約してくれていたレストランで食事をとることになった。
コースの料理を堪能して、またみんなで美味しいねと笑い合う。
デザートには、サプライズの誕生日ケーキが登場した。
ケーキを運んでくれたキャストさんが、その場でhappy birthdayのうたを歌い始めると、
陸斗と鈴ちゃんも一緒に歌ってくれて、葵さんが手拍子をする。
周囲のお客さんも温かく見守ってくれていた。
ケーキには“happy birthday 天音“の文字。
「天音ちゃん、お誕生日おめでとうー!」
「おめでと!」
「おめでとう、天音」
こうして祝ってもらうのは、これで二度目。
誕生日はこんなにも幸せに溢れた日なんだって、きっと私は毎年のように実感するのだろう。
「ありがとう……!」
テーマパークで遊び尽くした後は、宿泊するホテルにやってきた。
オフィシャルホテルを予約したから、客室内もキャラクターをテーマとしたコンセプトルームとなっていた。
テーマパークを出る頃には葵さんの腕の中でほぼ寝かけていた陸斗も、それを見たらお目目がぱっちり。
鈴ちゃんと一緒にはしゃぎ回っていたけれど、お風呂に入ってドライヤーを終えたら電池が切れたかのようにコロっと眠りに落ちていった。
「鈴ちゃん、眠い?」
「……ん……まだ、大丈夫……」
そして鈴ちゃんも、ベッドの上に座りながらうつらうつらと船を漕いでいる。
「眠いなら無理せず寝ろ。ほら、ごろん」
ベッド横に立った葵さんが、鈴ちゃんを寝転がす。
「まだ……」
少し抵抗を見せる鈴ちゃんだけど、葵さんに背中をトントンと叩かれると
目元がとろりと落ちていく。
「……あまねちゃん……」
「なあに?」
眠たげな目をしながら鈴ちゃんが伸ばした手をとって、傍に膝をつく。
「きょう、とぉっても楽しかったね」
「うん、とーっても楽しかった」
鈴ちゃんの言葉に頷きながら返事をする。
「また、ぜったいみんなで来ようね」
「うん、絶対来ようね。約束」
もう殆ど目も開けてられない状態で、けれど幸せそうに「ふふ」と鈴ちゃんが微笑んだ。
「あまねちゃん、だいすき……」
その言葉を最後に、鈴ちゃんも眠りに落ちていった。
その健やかな寝顔にそっと囁く。
「私も大好きだよ。……おやすみなさい」
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