私たちの結婚式

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「き、緊張する……」 「お兄ちゃん……大丈夫? 足震えてるよ」 チャペルの入り口の前で、兄と腕を組んで待機する。 兄は花嫁である私よりもガチガチに固まっていて、それを見ていると少しは緊張も治ってきた。 それでも高まる胸の鼓動。ゆっくりと深呼吸をする。 入場の合図と共に、チャペルの扉が開かれた。 「……行こう」 兄と腕を組みながら、バージンロードを歩く。 向かう先には、葵さんが待っている。 客席には鈴ちゃん、陸斗、お兄ちゃん。それから直子さんに美香さん。 みんなが私たちを見守ってくれている。 姿勢を正しながら、ゆっくりと。 兄のエスコートを受けながら、2人で歩いていく。 やがて、葵さんの元へと辿り着いた。 兄と目を合わせて、頷き合って。組んでいた腕をそっと解く。 私に向けて差し出された葵さんの手をとって、一緒に祭壇へ登る。 そうして2人で、老年の牧師の前に並び立った。 「新郎 葵さん あなたは新婦 天音さんを妻とし、病める時も健やかなる時も、悲しみの時も喜びの時も、貧しい時も富める時も これを愛し、これを助け、これを慰め、これを敬い、その命のある限り心を尽くすことを誓いますか?」 「はい、誓います」 葵さんが答えたら、次は私の番。 「新婦 天音さん あなたは新郎 葵さんを夫とし、病める時も健やかなる時も、悲しみの時も喜びの時も、貧しい時も富める時も これを愛し、これを助け、これを慰め、これを敬い、その命のある限り心を尽くすことを誓いますか?」 「はい、誓います……!」 迷うことなく頷いた。 私たちは、一度は別の人と別の道を歩んでいた。 けれどこうして巡り合い、共に生きることを誓い合った奇跡を決して離さない。
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