私たちの結婚式

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「うん、うん……っ」 涙腺が決壊する。 溢れた涙が次々と頬を濡らして、メイクも何もかも落としていくけれどもう何だっていい。 ただ嬉しくて、幸せで。 幸せで人が殺せるならば、きっと私は今すぐに死んでしまうだろう。 「まぁま、どこかいたいの……?」 泣き続ける私を見て、陸斗が心配そうに眉を下げる。 「大丈夫。ママは嬉しくて泣いてるんだ。 ……天音、結婚おめでとう……!」 そんな陸斗の頭に、ポンと手を乗せて。兄が祝福の言葉をくれる。 そんな兄も目からは壊れた蛇口のように涙が溢れ出していた。 一度は離れ離れになった兄。 タイムリープしなかったら、きっと会うこともできなかった。 私のたった1人のお兄ちゃん。 「2人とも、おめでとう……!」 美香さんも、目に涙を浮かべながら笑顔で祝ってくれる。 元義姉という垣根を超えて、私の大切な人となった美香さん。 「おめでとう」 黒留袖を着た直子さんの表情は変わらない。 けれどハンカチを当てた目元が赤くて、潤んでいるのが分かる。 私たちの結婚を、心から祝ってくれているのが伝わってきた。 「ありがとう……!」 何度言ってもいい足りない言葉だった。 涙はいつまでも止まらなくて、大洪水を起こしている。 「泣きすぎ」 そう言って葵さんが、指で私の涙をすくう。 でもそんな葵さんの目にも、涙が光っていて。 「……ねえ葵さん。私たちって、幸せだね」 「ああ……世界一な」 信じた人に裏切られて、ボロボロになって、もう二度と恋なんてしない……陸斗とふたりで生きていく、ただそれだけを思っていた。 けれど切り開いた未来の、もっと先にあったのは―――新しい幸福の形。 愛する家族と共に、私はこれからを生きていく。
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