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「蓮見さーん、蓮見天音さーん」
名前を呼ばれて立ち上がる。
「2番の診察室にお入り下さい」
看護師に続いて、示された診察に入りながら思う。
“蓮見天音”……そう呼ばれることにも、随分慣れたなぁ。
3年もそう呼ばれていたら、当たり前か。
呼ばれる度にくすぐったい気持ちになっていたのが懐かしい。
でも今は、その当たり前を嬉しく思う。
癖のようにお腹をさする。
そして私はゆっくりと立ち上がり、診察室へと向かうのだった。
「2人とも、買い物ありがとう。
今日はいつもより調子がいいから、私がご飯作るよ」
マイバッグを提げて帰宅した葵さんと鈴に、そう伝える。
すると2人は見事なシンクロで首を横に振った。
「いや、俺が作るよ。今日は検診だったし疲れただろ。
せっかく調子いいなら、その分寛ぎながら待っててよ」
「でも、いつもやって貰ってばっかりで……」
「家族なんだから、助け合うのは当たり前だよ!
お腹の赤ちゃんのためにも、お母さんはゆっくり休んでね」
「……2人とも、ありがとう……」
今、私のお腹には葵さんとの子どもが宿っている。
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