last episode

3/6
1334人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
陸斗の時と同様に、つわりは重めだった。 だけどそんな私に代わって、葵さんが家事や育児を率先して行ってくれた。 それに鈴も積極的にお手伝いをしてくれた。 特に料理は、妊娠前から鈴に教えてほしいと頼まれて、よく一緒に料理をしていた。 何でも飲み込みの早い鈴。 今では料理もお手のもので、葵さんと一緒になって我が家の食事を担ってくれている。 本当に2人には、支えられてばっかりだ。 お言葉に甘えることを伝えると、2人は早速料理を始めた。 「お父さん、玉ねぎ切り終わったよ」 「おー、ありがと。じゃあちゃちゃっと炒めるか」 キッチンに立つ2人の会話を聞きながら、ソファに体を預ける。 初期の頃に比べたらつわりも大分治ってきた。 けれど妊娠が発覚してからというもの、葵さんの過保護は増すばかりで。 同じように鈴も私の体をよく気遣ってくれる。 「おかーさん、はい! お水もってきたよ」 陸斗がそう言って、コップに注いだ水を手渡してくれる。 「ありがとう。ちょうど喉が乾いてたんだ」 今年5歳になった陸斗。 身体も随分大きくなって、少し大人ぶりたいお年頃だ。 前までは「ママ」だった呼び方も、鈴の真似をして「お母さん」になったりして。 「おかあさんはうごいちゃダメ! “だいじなからだ“なんだからね」 葵さんと鈴、ふたりのことをよく見ている陸斗は、 それに倣うように、私に念押しをしたりもして。 「りくはふたりのおてつだいしてくる」 食卓にお皿を並べたり、洗濯物を閉まったり。 自分にできることを見つけてたくさん頑張っている。 「ありがとう。えらいね、陸斗」 「りくは“おにいちゃん“だからね!」 私が褒めれば、陸斗は得意げな顔でそう笑うのだった。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!