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私は隣に座り直した葵さんに向かって、思いのまま伝える。 「……葵さん。私今、すごい幸せ」 “幸せにする“ 結婚式で言ってくれた言葉は本当だったね。 「……ああ。俺もだよ」 葵さんの肩に頭をもたれる。 葵さんは優しい手つきで私の頭を撫でた。 「それでこれからは……もっと幸せが増えるね」 「間違いないな」 葵さんと鈴と陸斗。それから生まれてくるお腹の子。 新しい家族が増えたら、きっと大変だけど賑やかで楽しくて……そんな毎日が待っている。 「どうかこれからも、末長くよろしくね」 「ああ、こちらこそ」 葵さんが、私に囁く。 「天音、愛してるよ」 「私も愛してる……」 葵さんと唇が重なる。 この人とするキスは、何回目でも甘くて蕩けてしまいそう。 絶望の底に沈んでいた、哀れなサレ妻。 そんなかつての私に教えてあげたい。 未来はこんなにも明るくて輝いているということ。 この先、辛いことや苦しいことだってあるだろう。 それでも愛する家族と一緒なら、きっと何度だって乗り越えていける。 私はそっとお腹をさする。 生まれてくる子は、どんな子だろう。 葵さん似かな? それとも私? 鈴ちゃんのようにしっかりものかもしれないし、陸斗みたいにのんびりやかもしれない。 どんな子だったって、みんなに愛されるっていうのは確定している。 「……だから、安心して生まれてきてね」 まだ見ぬ我が子に向かって、そっと囁いた。 拝啓 この空のどこかにいる神様 貴方に貰った2度目の人生を、悔いのないように生き抜いてみせます。 だからどうかこれからも、私たちのことを見守っていて下さい。 リベンジを果たした元サレ妻の未来は、どこまでも幸せで満ち溢れている。 〈Fin〉
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