1335人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
「……かわいい」
すっかり静かになった部屋で、陸斗と鈴ちゃんの寝顔を眺める。
2人とも、ちょっとやそっとじゃ起きないくらいにぐっすりだ。
今日はたくさん動いて遊んだもんね。
天使のような寝顔に自然と頬が緩むのを感じながら、ずれていた布団をかけ直す。
そんな時、背中から包み込まれるような感覚。
葵さんに、後ろから抱きしめられていた。
「……天音」
耳元で、葵さんの低い声がする。
「あおいさ……」
振り向きざまに、軽く落とされるキス。
子どもたちの前とは一気に変わった雰囲気に、懲りもせず鼓動は高鳴る。
「今からさ、ちょっと付き合ってくれない?」
葵さんに誘われて、2人でバルコニーに出た。
設置されたチェアに腰掛ける。テーブルにはワイングラスが2つ置かれていた。
「少し飲もうか」
普段はあまり飲まないけれど、今日くらいは特別。
葵さんが注いでくれたグラスを受け取る。
「乾杯」
グラスを重ね合わせれば、小気味いい音が響く。
「……おいしい」
口に含んだワインは、私の好みに合わせてくれたのだろう、甘みがあり口当たりの良いものだった。
「口に合ったならよかったよ」
そう言って葵さんもワインを煽る。
「……綺麗……」
「いい眺めだな」
バルコニーからは夜景を一望できた。
その綺麗さに思わずため息を吐く。
最初のコメントを投稿しよう!