幸せにします

6/8

1338人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
「あの、今日は本当にありがとう。 でも誕生日だからって……こんなに贅沢させてもらっていいのかな」 レストランでの食事もここの宿泊代も、全て葵さんが払ってくれている。 決して安い出費ではないはずだ。 葵さんがふっと笑みを溢す。 「いいんだよ、こういう時のために稼いでるんだから。 お前は何も気にせず楽しんでくれればいーの」 「……ありがとう……今日はすごく楽しかった。 陸斗にとっても、すごくいい思い出になったと思う」 「そりゃ何より。 ……でもまだ、一大イベントが残ってるんだけどな」 「……え?」 ボソリと呟かれた言葉を聞き返す私に、葵さんが言う。 「天音、俺がいいって言うまで目を閉じてて」 「え……っと……こう?」 突然のことに戸惑う気持ちと、抱いてしまう期待感に心臓が鳴り出す。 「いいよ。目、開けて」 その言葉を合図にそうっと目を開ける。 「……これって……」 目の前のテーブルには、リングケースが置かれていた。 「開けてみて」 震える指先でそっとケースを手に取り、蓋を開ける。 そこにはダイヤの煌めく指輪が収まっていた。 「……天音」 名前を呼ぶ優しい声に、顔を上げる。 「―――俺と、結婚してください」 それは、待ち望んでいた言葉だった。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1338人が本棚に入れています
本棚に追加