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日和が背負うもの・3
プレートを回収する魁我は顔を上げ、師隼に体を向けたまま視線を日和の方へと流す。
「日和様には私が付きますので安心してください。血族の方がいらっしゃる前に、準備できるようにしておきましょう」
「……そうですね」
月が変われば日和の血縁がやってくる。
そうすればまた状況が変わるかもしれない。
日和の家族が現れる期限はあっという間に残り一週間強に迫っていた。
「主」
自分も血縁と会う準備をしなければならない。
師隼と魁我との会議を終えて自室に戻ると、既に練如が待機していた。
「練如……。もうすぐ、血縁の人が来るそうです」
「……そうか。こっちで準備をしておく」
練如は日和が話す前に、その内容を察してくれる。
それだけでも少し、日和に少しずつ積み重なっていく緊張や不安が解れて安心できた。
「よろしくお願いします。私は残りの仕事を片付けます」
「……あまり無理をするな。気を張りすぎている」
「大丈夫です。私、今とても楽しいですから」
無表情だが心配をしてくれる練如に日和は笑顔を向ける。
「行ってきます」と一言添えて部屋を出た。
「気が紛れるだけで、それは本心ではない。疲れも焦りも全て解けるまでには至らない」
消えたその背に向け、練如は呟く。
そして主の部屋から姿を消した。
「では参りましょうか」
屋敷の門の前では狐の面を被った師、魁我が声を掛ける。
同じく白の狐の面を被り、日和は辺りを見回して首を傾げた。
「今日は浅葱さんは一緒ではないのですか?」
「彼は三上蒼汰から情報を聞き出し、監視しています。内容が内容だけに、代わりを立てる訳にはいかないので」
「なるほど……それもそうですね」
魁我と日和は屋敷を出て本格的な狐面の内部調査に乗り出した。
不審な狐、比宝家、金詰家……。
これから何が起こるのだろう、と少しだけ不安が募る。
まだ一人で術士をしている夏樹、復帰待ちの波音だって心配だ。
そして応援に行ったまま音沙汰なく帰ってこない正也の存在も……。
その間だけでも出来ることをしたいと日和は思っている。
自分一人だけでも出来ること。
頼りっぱなしじゃない、守られてばかりじゃない、少しでも強い存在になりたい。
そして、いつかは自分が守ってあげられる立場になれたら――。
「……魁我さん、私出来る限り頑張ります。皆の為に、この町の為に」
「ええ、私たち仕事は術士の方々を支えることに繋がります。頑張って解決していきましょう」
きっと近い未来に大きなことが起こる。
小さな不安の欠片はいずれ大きな変化を齎す。
今はただ、見えている問題に立ち向かっていくだけ――。
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