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7-4 日和が背負うもの・1
ふと目覚めると、いつもと景色が違った。
猫のマグカップに猫のペンが纏めて入れられ、机からは自分が以前プレゼントした手提げ鞄が下がっていて、棚には猫の小物がいくつも覗いている。
本当に、猫が好きなんだなぁ……と思う反面、あまりにも多い猫グッズに一種の執着を感じる。
昨日清依が猫を抱えていたが、それとこれとは別という事?
それとも家の猫とは何かあるのだろうか?
兎にも角にも、波音らしい部屋だと感じた。
寝起きだと言うのについついどうでもいい思考が先に立ってしまう。
スマートフォンを見ようとしたが、それより先に眠った猫のお腹に時計が着けられたにゃんとも可愛い置時計が目に入った。
針にまで黒猫がいる。
なんて細かいデザインだろう。
(えっと、5時半……いつも通りですね)
ベッドの波音を見れば当然のように眠っている。
日和はもう一度目を瞑って、波音が起きるのを待った。
…………。
……。
「あんたさー、別に私が起きるの待たなくてもいいのよ?」
「うっ、すみません…」
起きてから30分。
ふとトイレに行きたくなって、静かに部屋を出たつもりだったが……戻ってくれば波音が起きていた。
起こしてしまった事を謝ると、波音はそんな一言を吐いてぶすくれてしまった。
それから共に朝食に向かい、波音は目玉焼きを口に入れて咀嚼する。
息を吐きながら半眼でじっと見つめられた。
「それにしても日和って早起きなのね」
「うーん……大体早くて4時、遅くて6時半くらいでしょうか。……ん、このスープ美味しいですね」
じわりと温かさが手に伝わって、スープを口に入れるとコンソメの風味が口の中に広がった。
その姿さえも波音は呆れたように日和のことをじっと見た。
「早すぎない?? あんたちゃんと寝てるの!?」
「うーん、いつも睡眠時間が短いんですよね。3時間から5時間ほどあれば十分です」
「信じらんない……どういう体してんのよ?」
波音の半眼は更に眉間に皺が寄り、一層険しくなった。
更にじっと体を見つめられるが……何故胸を見るのか。
「そう言われましても……。私は元気ですよ?」
「悪い事は言わないから、眠れる時に寝ときなさい」
飽きれた顔をする波音は明らかに食事を叱る玲と酷似していた。
何も食事だけでなく、睡眠時間まで口に出さなくても。
華月にもたまに心配されてしまうが、ついつい心の中で思うのだった。
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