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  タルドゥは一本一本の木を巡って歩いた。樹皮に触れると、死者の身体に刻まれた記憶が再現された。それは他者の人生にひきずりこまれるような経験だった。タルドゥはエトルリアの民の痛みを共有した。 イニストラードが言っていた絵空事、神々を滅ぼし、人間の世をつくる話を思い出した。同時に、このような状態に置かれたものを立ち上がらせ、味方につけることの困難を思った。  イニストラードのような大きなことを考えるのは、自分には向かない。  手の届く範囲の、顔の見える人間のことしか、自分には考えられない。  タルドゥはそう思った。  今は、ブランウェンだ。  この場所でブランウェンを見つけられるとしたら、それは彼女がすでに死んでいるということだったが、そのことは考えないようにした。  タルドゥは歩きさまよい、探し求めた。何人めの記憶か、数えるのをやめたころ、タルドゥはついに巡り合った。  その記憶の中に、自分がいた。ヨーリオンがいた。アリアンロッドがいた。白く輝いていたころのキンメリアの城壁と、海辺の小さな村があった。簗の仕掛けられた川のそばに、彼女は住んでいた……  ※
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