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 ブランウェンの記憶はそこで途切れていた。  キンメリアの都でのことも、そのあとの戦いのことも、読み取ることはできなかった。それがどういう意味なのか、タルドゥにはわからなかった。  しかし確かに、ブランウェンだったものはそこにいた。  梢にただ一つついた、巨大なつぼみ。木全体の背丈の半ば以上を越える大きさを持つそれは、肉色のぶあつい皮に包み込まれている。掌を押し当てると、たしかな脈動を感じる。力を込めて引っ張ると先端が開き、赤い粘液質のものがどぼどぼと溢れ出てくる。さらに開くと、懐かしい妹の顔が粘液めいたものに覆われているのが見える。ブランウェンは眠っている。眠っているように見える。そう、死んでいるわけがない。  ある線まで包皮をひきはがすと、それは抵抗を失い、自ら開きはじめた。  赤い粘つくものが周囲に飛び散り、その上にブランウェンの身体が、ゆっくりと投げ出された。  そして、それで終わりだった。  ブランウェンは呼吸をしていなかった。身動きひとつ、しなかった。
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