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アシュタロテはある山の頂で膝をついている。胸を押さえ、荒い息を繰り返している。ひゅーひゅーと、笛めいた呼気が漏れる。その背後には無数の避難民がいる。巨人の血が、彼女を焼き尽くそうとしている。だがまだ死ねない。 人々を不安な顔にさせたまま、こと切れるわけにはいかない。どうにかして笑顔で振り向かなければならない。  そして、もう怖れることはないと告げなければならない。  世界は生まれ変わるのだから、と……
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