呪いの村行き最終バス

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呪いの村行き最終バス

「お客さま、起きてください。終点ですよ」 空港行きの高速バスから降りたら、なぜかそこは辺鄙な山奥のバス停。 しかもこれが最終バスとか、マジさいあく! 今ごろは海外に向かう飛行機に乗ってるはずだったのに。 もうすぐ陽が沈みそう。 どこかでひぐらしが鳴いている。 スマホの地図アプリを開こうとしたけど、圏外で反応しない。 仕方なくあたしは、歩きながら今夜の宿を探すことにした。 人っ子ひとりいない道を歩いていくと、一枚の看板が立っていた。 『ここは名もなき呪いの村 この村の名前を言ってはいけない この村に入ってはいけない 破れば呪われる』 何これ? もしかして、オカルト系の噂が大好きな人たちを集めようっていう、村おこし的なヤツ? それとも悪趣味なイタズラ? 「そうではありませんよ」 話しかけてきたのは、着物姿の男だった。 「……は?」 鬼の面なんてかぶっちゃって、何コイツ。 「手のひらを見てごらんなさい」 「……え?」 見れば、すべすべだったはずの肌が、真っ赤に爛れている。 「やだ……かゆい……かゆいぃぃっ!!」 かいてもかいてもかゆみだけが全身を蝕み、かき傷が燃えるように痛む。 「この看板には、書かれていない続きがあるんですよ。“嘘つきはこの村に呼び寄せられる。嘘つきは呪われろ”」 「どうして……なんであたしなのよおっ!!」 あたしはあのブサイク小デブに、さんざんいい思いさせてやったもん。 “借金肩代わりしてくれなきゃ死ぬ”って泣いてすがって、大金振り込ませただけだもん。 チョロいあいつが悪いのよ! 「あまつさえ死ぬなどと嘘をつき、私腹を肥やしたあなたが、この村に呼び寄せられたのは、必然なのです」 ああかゆい痒いカユイ痛いかゆい痒いいぃぃっ!! 血が出るくらいかきむしってるのに、……か……ゆい……か……。 「ああ、もう聞こえていませんよね。さようなら。……永遠に」 かゆみも痛みも徐々に遠ざかり、あたしの意識は、深い闇に飲み込まれていった。 【完】
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