愛合傘

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愛合傘

「明里ー?」 「なんですか?」 すっと息を吸った先輩は、同じ傘の中にいる私の方を見る。 「俺と付き合わない?」 「え……」 なんで? 先輩は私のこと何とも思ってなさそうだったのに。 さっきの私の言葉でいけるとでも思ったの? 「明里のこと好きになった。勉強教えたり、大会のときにテントで2人で話したり。一緒にいると楽しいし、なんか落ち着く。」 「私でいいんですか……? だって先輩、同い年でも仲良い女子いますし、部活でも……」 恐る恐る聞いた。 「明里がいいからさ、俺は。」 つぶやいたあと、「で?」と聞いてきた。 「はい……」 「はい、ってどう言う意味?」 笑いながら聞いてくる。 絶対この状況楽しんでる……! 「付き合いたいです!」 いつもの調子で言うと、「じゃあ、よろしく」と笑った先輩と目があった。 「あ、付き合うんだし、田森先輩呼びじゃなくて、雄也(ゆうや)先輩ね?」 「それは恥ずかしいですって!」 付き合っても私たちの距離は変わらない。 傘の中で付き合い始める人は世界中でどれくらいいるのだろうか —— 『あいあいがさ?』完
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