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相合傘
「ん、田森先輩。傘差さないんですか?」
「いや、それがカバンに入ってなくてさ。」
部活終わりの帰り道。
天気予報とは裏腹に雨が降ってきた現在午後6時。
カッパは持っていない私たちは、自転車を押しながら歩いている。
「入ります?」
傘を傾けて先輩の方に見せた。
「うん、いい?」
田森先輩は男子の中で身長が高い方だ。
身長の高い先輩が入るように傘の位置を上げる。
「先輩って身長何センチなんですか?」
「175とか……かな?」
「たっか」
田森先輩はふっと笑うと「持つよ」と言って私の手から傘を抜いた。
「ありがとうございます」と言ってみたものの、ちょっと恥ずかしさが残る。
「明里は何センチなの」
「153.7です!」
「ちっさ」
「でも1年で7ミリ伸びたんですよ! 第3次成長期来たかもしれないです」
「いいよ? そんな無理しなくて」
笑いながら先輩は言う。
「ほんとなんですって!」
私も笑いながら返した。
男子の先輩と2人きりの帰り道。
しかも相合傘。
だけど私たちは付き合っていない。
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