49.伯母side

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49.伯母side

 私の妹はいわゆる、“勝ち組の女”または“特別な女”だった。  幼い頃から外見に恵まれ、両親はもちろん、あちこちの大人から大げさに『こんな美少女みたことない。大きくなれば街一番の美女になるぞ』と褒めそやされていたのをよく覚えている。  そんな美人の妹の姉だっていうのにちっとも似ていない。  いや、似てないことも無い。ひとつひとつのパーツは似通ってはいた。それでも綺麗に整った妹と比べたら全体的にバランスが悪かった。まあ醜女じゃないだけマシってもんだ。  姉妹仲は可もなく不可もなくと言った処だった。    ただ、妹は物心がつく頃には少々困った子になっちまってた。    ――私は人とは違う。  ――私は特別に可愛い。  ――男の子達が私を好きになるのは当然。  そんなことを当たり前に思っちまう嫌な子供に成長しちまった。  学生時代は学校一の美人と言われていたし、道行く男が自分に見とれるのは当然だと思っている。とにかく、自分が一番じゃないと気に入らない子だったね。  女友達が一人もいなかった分、男を大勢侍らせてた。  ここで両親や私がぶん殴ってでも軌道修正させるべきだったんだろうね。  まあ今となっちゃ、焼け石に水だったとは思うけどさ。  自分が美人だと言う事をよく理解していた妹はその美貌を武器に女優への道を志した。と、ここまではいい。問題は妹に演技の才能が全くと言っていいほどなかった事だ。それでも華のある子だったからね。舞台にはだして貰えていた。    あの世界じゃよくある事らしいが、いつの間にか妹はパトロンを大勢こさえていた。  一度だけ見た男。  庶民の私でも分かる位に高級品に身を包んだ男が妹を連れて行っちまった。  後から母に聞いたところ、お貴族様が妹を見初めたらしい。  見初められたと言っても「愛人」としてだ。  それも父親以上に歳の離れた男だって言うじゃないか。  『娘を貴族に奪われた』  父親が喚いていたが誰も相手にはしなかった。  どうやら妹は喜々としてついて行った様子を大勢に見られちまったようで、誰も両親に同情はしなかった。  『そこそこ大きい商家から縁談が入ってたのに勿体ないね』  母親は普通の結婚を蹴った妹に対して怒ってもいた。  どうやら、美人の評判を聞きつけた求婚者は私が思う以上に多かったようだ。流石に貴族はないが、商家なら数件縁談が舞い込んでいたらしい。  その頃には既に私は嫁いだ後だったからね。  妹の事も両親の事もなんだか他人事のように感じちまったよ。  幼馴染の菓子職人の旦那との生活が忙しかったからね。  もっと親身に聞いておくべきだったと思ったのは随分後になってからだった。  後悔先に立たずとはよく言ったもんだ。    
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