20.とある編集長side 

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20.とある編集長side 

「ああああぁぁぁぁぁぁ!!!何故だ!!?どうしてこうなった!!!」  うるせぇ。  今日も社長の奇声が聞こえてくる。 「くそくそくそ!!三流記者を雇ったばっかりに~~~~~っ…………我が社はお終いだ~~~~!!!」  社長室から出てこないのはいいが、煩すぎるぜ。  ま、うちの新聞社は今では風前の灯火だからな。無理もねぇ。  事の発端は、新進気鋭の魔術師ライアン・キング侯爵子息とエリート魔法医師エラ・ダズリン男爵令嬢の熱愛を記事にしたことだ。主にエラ・ダズリン男爵令嬢のシンデレラストーリーがメインだったが、相手のキング侯爵子息には野郎の恋人がいやがった。それを新人に聞いた時は面白い記事になると思ったぜ。    俺は女にしか興味はねぇが、お貴族様には()()()()()()()が一定数いやがる。だから話題の侯爵家のお坊ちゃまもその類だとばかり思っちまった。   『男娼か?』 『いえ、魔術学院の同級生らしいです』 『なるほど、未来の魔術師長様だ。それも次期侯爵だ。女を恋人にしちゃあ何かと問題もでてくる。野郎なら幾ら使っても責任を取る必要はねぇ。貴族のお坊ちゃんも考えたもんだ』  ゲラゲラ笑ってたあの頃が懐かしいぜ。  新人が男爵の嬢ちゃんと友達だって言うじゃねぇか。 『特ダネになるぞ!!嬢ちゃん達から独占インタビュー取ってこい!!!』  あれだな。  調子こいちまったんだ。  しかも新人は本当にインタビューを取っちまった。  男爵家の嬢ちゃんと、二人を知る魔術学院の教員や学生のインタビューをな。    今までにないスキャンダラスな記事は読者の興味を大いに引き、創立以来の売り上げになった。  あの時は笑いが止まらなかったもんだぜ。  同性同士のパートナーシップが認められちゃあいるが、まだ日も浅い。歳より連中には頭の固い奴らも多い。案の定、男女のカップルは祝福された。やり玉に挙げられたのは当然、侯爵家の坊ちゃんの「イロ」だ。これから結婚するであろう二人のお邪魔虫の男が集中砲火するもの仕方ねぇちゃ、仕方ねぇわな。と思っていた以前の俺を殴りてぇ。    こうなると分かってりゃ、記事なんてしなかったのによ。  でもな、後輩を妊娠させてんだ。  こっちも責任を取って直ぐに結婚するとばかり思っちまった。こういうゴシップ関係ってのは飽きやすい一面もあるからよ、結婚してめでたしめでたし、で終わっちまえばそれで話題にもなんないもんだ。バッシング受けてる坊ちゃんの「イロ」だってちょこっと我慢すりゃいいだけだ。  世の中ほんっとうに分からんもんだぜ。  まさか、坊ちゃんが女を孕ましといて結婚しないと宣言しちまうなんてさ。  今も結婚するしないでメッチャ揉めてるらしいぜ。  最初は結婚するもんだと誰もが思っちまってたからな。祝福ムードが一気に修羅場と化しちまった。鬼のような形相で「絶対に結婚などしない」と吐き捨てちまった。  当然、坊ちゃまの評判は地に落ち、『女の敵』認定された。  その後はホントに泥沼状態だ。  貴族のエリートの転落ぶりは笑える。  読者も好む。  人の不幸は蜜の味とはいうが、それが恵まれた人間だった場合に限ると思うぜ。これが貧乏人の男だったら、皆はここまで面白おかしく騒いだりしないだろうよ。  それにしても何度聞いてもこの社長の怒り狂う叫び声は耳障りだ。他の社員達のイラついた表情もよく見かける。それ以上に沈んだ顔の連中が多いがな。    ホントに何でこんなことになっちまったんだ?  ま、俺達が化け物たち(タナベル家)の怒りを買っちまったせいだってのは十分わかっちゃいるんだがな。    
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