48.従姉side

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48.従姉side

 隣にいる夫にどれだけ助けられたか分からない。  心身ともにズタボロだった私を救ってくれたのはニックだけ。   「ニック、ありがとうね」 「急にどうしたんだ?」 「何となく言いたくなっちゃったの」 「……先日、あいつがきたせいか?嫌な思いしたんじゃないか?」 「メイソンがここにきて何だか昔の事を思い出しちゃったの。あの時、庇ってくれたのはニックだけだったな、って。私と母さんを連れて来てくれたのにちゃんとお礼言ってなかったから。ニックは私達のせいで王都を離れることになったし……」 「なんだ。そんな事か。礼ならお義母さんから何度も言われてるさ。俺はデイジー達と一緒にいたかっただけだ。俺は親が早くに死んでるかなら。近い親戚だっていない。ずっと惚れてたデイジーと所帯を持てれたんだ。これほどの幸福はないさ」 「ニック……馬鹿ね」 「おいおい、馬鹿はないだろ」  二人揃って笑うと部屋を出た。私はいつもニックに助けられている気がする。王都での生活、仕事、友人。私のために全てを捨ててくれた。申し訳ないと思うのにそれが嬉しかったりする。  子爵領にきて良かった。  ニックはその仕事ぶりが認められ、子爵領にあるタナベル商会を任されている。  母さんは此処に来てパイの専門店を開いた。  元々、パン作りより菓子作りの方が得意な母さんの店には連日長蛇の列ができる程だ。 『パイ生地を作ってると父さん達の事を思いだしちまってずっと作れなかったんだ。デイジーにも苦労かけちまったね。もっと早くあの場所から離れるべきだったんだ』  憑き物が落ちたかのように笑う母さん。  王都にいた頃よりも生き生きしている。  愚痴一つ零さない母さんは私が思っている以上に辛かったに違いない。    新しい家族と共にこれからもココで生きていく。  今日より明日。  もう過去は振り返らない。  
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