ダブルブースト

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「なぁ、新太郎は何にするん?」 教室の机にパンフレットを広げて、新太郎(しんたろう)(つばさ)は真剣に考え込んでいた。 「俺もまだ悩んでんだよ」 パンフレットにはグロテスクな脳のイラストと共に、脳のそれぞれの部位ごと、大脳皮質、大脳辺縁系、脳幹、小脳など、それぞれさらに分類され、細かい説明がされている。 つい先日「人工知能の移植に関する法案」が可決された。 二○歳になると一つだけ、人工知能を自分の脳に移植することができる。 数十年前、人工知能と言えば自ら学習していくコンピューターであった。しかし長年の研究でいまやその域を脱し、取り付けた部分の機能に絶大な効果を与えることができる、いわば後付けするブースト脳にまで進化した。一部では「取付型新脳」と呼ばれていた。常に人工知能は学ぶ。 実用化に向けて長年研究され、マイクロチップ一枚、脳に埋め込むだけの簡単な移植だ。基本的に一度移植したものは死ぬまで剥がせない。また複数個移植することも禁止されてる。 人体に流れる微量の電流があれば電源も必要ない。まさに夢のようなモノである。
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