ダブルブースト

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先日教室で会った慎太郎は妙に痩せていた。人工知能のせいだ、と愚痴を漏らしていたが、翼にはそんな症状は出ていなかった。 ただ、己が望んでいるような効果が出ていないだけだ。 もっと上を目指したい。高みに上りたい。ただそれだけなのである。 先日検索してたどり着いたここは病院だった。サイトには病院やクリニックといった表記はなかった。 外観に特に変わった様子がなかったので思い切って中に入った。内装も普通、よくある病院だった。そのまま先生の話を聞くことに決めた。 病院の待合室で手に握ったグレーのケースを何度も見返した。 これさえ手に入れれば。 何度も反芻していると診察室に呼ばれた。 深くシワの刻まれた医師は、大事そうに握っているものはなんだ?と聞いてきた。 一瞬回答に困る。果たして正直に話していいものなのだろうか。ここまで来て怖気付いた。 口ごもる翼を見て、医師は机に並べられた書類の中から一枚のパウチされたものを取り出した。 「ダブルブースト」と書かれている。 「ここに来たってことはコレが目的でしょ?」 正直何を言っているのか理解が出来なかった。しかし、続けられた言葉でハッとした。 「手に持ってるのは人工知能じゃなくて?それを移植したいんじゃないの?」 見抜かれていた。ぐうの音も出ない。 でもなぜわかったのだろうか。 「ここに来る人は訳ありな人が多くてね。まぁ大抵がオプション目当てなんだけどね」 医師はうっすらと笑みを浮かべた。 「だからだいたいわかるんだよ。その手の悩みを持った人の……んー、なんていうか雰囲気みたいなものがね」
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