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「大丈夫。誰にも言ったりしない。守秘義務がある」
少し緊張が和らいだ。
翼はココに来た経緯を話した。
「その手に持ったものの中身を見せてくれない?」
「中身ですか?」
「そう。どんな脳に仕上がってるか見てみたいんだよ」
翼は医師に人工知能を渡した。
パソコンに繋がった特殊な機械に差し込む。
「あれっ?」
医師の言葉に、画面を覗いていた視線を向けた。
「これ、何も入ってないよ」
「えっ?どういうことですか?」
「言葉のまんま。何のデータもない、まっさらな人工知能」
翼は狐につままれたような気持ちだった。
コレは移植してもすぐに力を発揮してくれないと言われた。まっさらな人工知能をイチから育て上げることになる、と。
なにも考えられなくなった翼に医師は言った。
「翼君に耳よりな話があるよ。最近入荷したばっかりなんだけど、陸上競技で全国一位を取った人の現役の人工知能」
「えっ!?」
医師は電子カルテに書き込んだ。
「人工知能ts320087gz7」に興味あり。マッチング良。
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