ダブルブースト

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元々は、知的障害者のサポートの観点から実用化が始まった。しかしいつしか目的が変わっていった。 先代の首相は実用反対を貫いていたが、実用賛成派の過激派に暗殺されてしまった。三年前のことだった。 すぐに選挙が行われ、新たな総理大臣を選出する運びとなったが、賛成派も反対派も見事に真っ二つに割れた。僅かに票を上回った賛成派が政権を握ると、ことは瞬く間に進んで行った。 賛成派の意見は、せっかく進めてきた研究をより多くの国民の役に立てたい。というものだった。 反対派は、人工知能の付いた人間はもはや人間ではない。という極めて辛辣な意見だった。 脳に直接貼り付けるだけで、目に見える訳でもない。見た目はあくまでも今までと変わらない。 賛成派の意見はあくまでも建前であり、真意はより優秀な国民を増やしたい。という野心そのものだった。 実用化される前のモニター実験では、知的障害者や何らかの脳の疾患で運動機能を失われた人への効果は絶大だった。認知症の患者は過去の記憶を取り戻したかのように、また半身不随だった患者はみるみるうちに運動機能を回復し、日常を取り戻して行った。
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