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新太郎は先週ネットみつけた病院に来ていた。
ここに来るまで病院ということは知らなかった。予約をする時もネットで行ったし、病院やクリニックといった名称はついていない。来てみて病院としり、少しホッとした自分がいた。
診察室に通された新太郎は、おでこに深くシワを刻んだ医師と対面した。
今体に起こっていることと、ここに来た経緯を話すと、医師はわかってますよ、と言わんばかりの反応を示した。
「あなたのような方々が他にも沢山いらっしゃいますからね。データのクリアリングですね」
医師はにっこりと笑った。
そうです、と新太郎がいう間を与えず、医師は話を続けた。
「うちを選んだってことは、オプションの方に興味がおありじゃないんですか?」
再び医師は笑ったが、その目は笑っていない。どこか怪しさが浮かんでいた。
「オプションっていうのはなんなんですか?」
新太郎は尋ねた。ホームページに書いてあることは知っていたが内容までは調べていない。
医師は少し目を見開いた。
「うちのオプションをご存知ない。ご存知なくてうちを選ばれたのはなかなか珍しいですね」
医師はデスクの上に立てかけられている書類から、パウチされた一枚の紙を新太郎に向けた。
「これがオプションです」と言われ渡されたそれには、「ダブルブースト」と書かれていた。
「これは?」
説明を読むより先に聞いていた。
「簡単ですよ、人工知能をもう一個増やすことです」
「もう一個!?」
新太郎は驚かずにはいられなかった。
人工知能は二○歳以上で一つだけつけられるという法律だ。それを二つ。
頭がこんがらがってきた。
脳の一部分をブーストし通常以上の何かを得るのが人工知能の移植だ。それを二つ。もちろん違法なのは疑う余地もない。しかし興味が無いかと言われればそんなことも無く、興味を示してしまう。
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