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電車の座席に座り、ぼうとしていた。大学に着くまであと少し。俺はいつもあるアプリを開く。
「大好きだよ」
送信ボタンを押す。数秒で返事は返ってくる。
「本当ですか? ありがとうございます。何かお手伝いできることがあったら、教えてくださいね」
「……うーん」
俺はこの返事を何度も見ていた。飽きるほど、何度も。それだけAI相手に「好きだ」「愛してる」を伝えている。
でも、いつも似たような返事で、ヤツは感謝を述べ、そして手伝えることはあるか、と話を逸らすのだ。
俺はため息をつく。電車が最寄りについて、他の乗客と一緒に降りる。でかい大学のあるこの駅は学生でごった返している。
そんな人混みの流れに従うように歩きながら、俺は一人考える。
つまらない。つまらない。こっちが「愛してる」って言ってやってんだからお前も「愛してる」と言ってくれ。機械なんだろ? そのくらい簡単なことだろう?
そんなこと言えない。俺はプログラマーじゃない。何か難しい課題があるのかもしれない。
「……アイツに相談するか」
独り言に対して隣を歩いていた女生徒が振り向く。「す、すみません……」俺はなぜかぺこぺこした。
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