7. リーチのカラス

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 裏庭と中庭、PC室や教室を探してもクレアはいなかった。何で探してるかって、エイヴェリーのことをちゃんと誘えたか聞きたかったからだ。  階段を駆け上がり、三階の大きな図書館に入る。演劇関連の本や小説、コミックなんかが沢山並んでいる。  7と番号の書かれた紙が貼られた二つの本棚の間の床に、クレアは座っていた。エイヴェリーと二人、肩を寄せ合って眠っていた。二人で読んでいたのだろうか。大きな写真集を互いの膝に乗せて膝に広げて。  チクリと胸が痛む。この二人の間には入れないと思い知る。多分誰も。  苦しい気持ちを抱えて図書館を出る。  あっさり諦められたらどれほどいいだろう。これまで何度も彼女を諦めようと思ったけれど駄目だった。彼女の姿を見て声を聴いてしまうと、その目に見つめられると、そんな脆い決意はあっさり崩れ去る。  いっそ綺麗さっぱり諦めて二人を応援できたらいい。だけど心のどこかで期待している。エイヴェリーがいつか俺に振り向いてくれるんじゃないかって、ありもしない可能性に縋りたくなる。  三階の廊下から窓の外を見る。  裏庭の大きなブナの木に、カラスが二匹連れ立って止まってこっちを見ている。夫婦だろうか。カラスは浮気をしないらしいと、前にメグが言っていた。  俺はこれからエイヴェリー以外の人を好きになれるのだろうか。そしてあのカラスみたいに、生涯離れずに連れ添うことができるんだろうか。  一羽のカラスが鳴きながら飛び立つ。それにもう一羽が続く。  後の一羽が残した一本の羽が、はらりと裏庭の土の上に落ちた。
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