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「ご飯炊けたよ」
アレックスが、火に掛けておいたご飯の入った飯盒を三つまな板の上に並べる。
制限時間は一時間。あと五〇分しかない。
今回俺たちが挑戦するのは和食だ。米を炊くのは時間がかかると予想されたため、担任に許可をとり到着してすぐ火にかけたのだ。
アレックスが炊いた米をボウルにあけ、準備していた鮨酢を入れてヘラで混ぜる。アレックスを手伝って、酢飯を海苔の上に平らになるようにヘラで薄く盛り付け、その上に潰したアボカドをワサビがわりに乗せ、キュウリと生の鮭を乗せて巻く。できたのはプラスチックの大皿に並べていく。他にもマグロや小さく切った肉、細く切った卵焼きなんかを具材に使う。
ティファニーはレタスとキュウリ、トマトといった野菜とワカメに手作りのわさび醤油のドレッシングをかけたサラダを作っている。
同時進行でメグが汲んできた水の入った鍋を火に掛けて、切った野菜や豆腐を入れて具沢山の味噌汁を作る。
メインディッシュとして、クレアとエイヴェリーが協力して肉じゃがを作る。人参、ジャガイモの皮を剥きながら、二人は冗談を言い合って楽しそうに笑い合っている。
「おい、喋ってる時間ねーぞ」
注意された二人は、「ごめん」と謝り真剣に取り組みだした。
「オーシャン、こっちは一人で大丈夫だからクレアたちを手伝って」
アレックスに言われ、クレアとエイヴェリーの剥いた野菜を、まな板の上で切る。急いで切ろうとして指を切ってしまい、エイヴェリーが「大丈夫? オーシャン」と心配そうに覗き込む。ここで傷口をぺろっと舐めてくれるなんてご都合展開は早々ないだろうな。なんて妄想していたら、アレックスが「オーシャンったら、ドジなんだから」と言ってティッシュを俺に渡した。「これで指、抑えてて」と言ったあと、後ろの木の下に置いていたバッグから絆創膏をとってきて、「血が止まったらこれ巻いて」と早口で伝え作業に戻る。
一瞬だけ妙にアレックスが魅力的に見えて、自分の目がおかしくなったのかと思った。
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