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私はあらゆる記憶から、ニニカさんの思い出を集めました。そして、まばたきをするように一度光ると、私の上にぼわん、と、ニニカさんの像が浮かび上がりました。
これは、ニニカさんとニキさんが最後に行った旅行の写真から作成した映像です。
「ニニカ」
ニキさんが、静かに呼びかけます。
するとニニカさんは、
「はい、ニキ。なあに」
と、答えました。
「今日は七夕だよ」
「そうだね。今日は七夕だね」
「覚えてる? 僕と君が最初に二人で会ったのは、七夕だったよね」
「もちろん、覚えてる。すごく緊張してたから、何話したかは覚えてないけど」
「そうそう。君、ケーキを頼んだくせに、一口も食べなかったんだ。嫌われたかと思ったよ」
「ごめんね。食い意地が張ってるって、思われたくなかったの」
ふふ、と、ニキさんはほほえみました。
「僕は、あの思い出が一番好きだ」
と、ニキさんは言いました。
「知ってる」
と、ニニカさんは答えました。
なぜなら、ニキさんは去年も、その前の年も、何ならニニカさんがニキさんのそばにいた時も度々、そのことを言っていましたから。
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