ねぇ

7/9
前へ
/9ページ
次へ
「このさびしさを抱えたままで、僕はいつか幸せになるよ。許してほしい」  そしてニキさんは顔を上げ、私の上のニニカさんを見つめました。 「ニニカ、一生君を忘れることはない。ずっと君を愛してる」 「ニキさん。私も」  と、言いました。  ニキさん、私も。  それを言ったのは、誰でしょうか。  私です。  ニキさん、気づいていますか。  あなたは、ニニカさんと話しているのではないのです。  あなたは、私と話しているのです。  ずっと、私と話してきたのですよ。  ニキさん、気づいていますか。  ねぇ、ニキさん。   「ねぇ、リリ」  不意に、ニキさんが私に語りかけました。 「はい、ニキさん。何でしょう」 「ニニカを消して」 「はい、分かりました」  ふっと、霧吹きで吹き消したかのようにニニカさんの像が消え去りました。  ニキさんはぼんやりと見上げています。  そこにあるのは、虚な空間に過ぎません。  もう、ニニカさんはそこにはいません。それでもニキさんは、いつまでも見つめています。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加