ねぇ

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 7月7日の夜が来ました。  夜のとばりが下りると、ニキさんはテレビを消して、ルームライトも全て消しました。そして、むらさき色のビンに入ったロウソクをともしました。  ニキさんは私の前にいます。大きなニキさんの手のひらが小さな私の体をすっぽりと包み、私をテーブルに乗せました。  ニキさんは、ソファに腰掛けます。  そして、私を呼びました。 「ねぇ、リリ」 「はい、ニキさん。何でしょう」  私が話すと、ニキさんの顔がぼんやりと明るくなります。これは、私が発する光のせいです。私には、発声すると光を出す性質があるのです。  私はニキさんの顔を見ました。ニキさんは、私を見つめていました。  とても穏やかな表情です。笑い出しそうな、泣き出しそうな、ひとときの凪のような顔です。 「これからニニカと話したいから、ニニカを呼び出して?」  私は 「分かりました」  と答え、ニニカさんの思い出を呼び出しました。  ニニカさんのことを思い出すのは、難しいことではありません。ホームパートナーである私には正確かつ尽きない記憶装置がありますし、ニニカさんの思い出は、ニニカさんがこの家を去って以降、増えることもありませんでしたから。
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