婚約者

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婚約者

城の入り口で、門番に話をかける青年がいた。ボロボロのフードを被った彼は一枚の手紙を握っていた。 「すみません、クシュラって人いる?」 「クシュラ様になんか用か?」 「手紙、渡せって」 口数の少ない彼の言葉はそっけなく感じる。少し門番は気にはなるが、青年からその手紙を受けとる…… 押印を見た瞬間に顔色を変えてしまう。 もう一人の門番に慌てながらその手紙を見せた。 「おい……竜国からだぞ」 「う、嘘だろ!重要文書かもしれんぞ!」 「でも、陛下ではなく、クシュラ様宛てだぞ?」 そんなあたふたし始めた二人だが、青年は背を向けて帰ってしまう。 「んじゃ、帰るね」 「まてまて!お前、これを誰に渡された?」 「……クシュロブから」 その名を聞いてしまうと、腰を抜かす程に驚き言葉を失ってしまった。そんな姿を不思議そうに首を傾げながら見ていたが、まぁいいかという感じにまた歩き始める。 「こ、この手紙クシュロブ皇帝からだぞ?!」 「クシュラ様のお父様だろ?!陛下にまず報告をした方が良くないか?」 「いや、だがクシュラ様に直接の方が良くないか?でも今不在だしな……」 どうしようどうしようとしている間に、一人の女性がやってくる。黒い角が生えていて、細く長い黒い尻尾を時折振りながら、黒いハイヒールを鳴らして近づいてくる白い髪の彼女。 赤色の瞳はまるで爬虫類のよう。 ニコニコしながら上機嫌で門番に近づいてくる。 「ただいま帰りましたわ!あらお二人さんどうしたのかしら?」 「……おぉ、我らが憧れの姫、美しく可愛いクジュン様!!」 「本当に貴女は素晴らしいタイミングで来てくださる!」 駆け寄り大の大人が目を輝かせながらクジュンを誉めちぎる。 「あらあら、そんな目を輝かせて見つめられたら困りますわ。なんだか照れてしまいます」 「クジュン様、クシュラ様にお手紙が……」 「心優しいクジュン様にお願いが」 「これをクシュラ様に届けて頂けませんでしょうか?」
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