婚約者

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「本当ですわ。こんなに可愛い存在、何故好きになれないのでしょうね。老いて死ぬまでピチピチのままで隣にいてさしあげるのに」 ヴィエラの髪を整えるのを手伝ってあげるクジュンはそう言っているが、今までの事を思い出しているのか、少しだけ口元が固く見える。 鏡越しに見るそのクジュンの表情をヴィエラは見つめた。 「人間からはドラゴンと恐れられ忌み嫌われて、同族から半端なドラゴンの出来損ないと罵られ。私達ハーフドラゴンは生きるのに窮屈でしたわ。お姉さまもそうですわ。だからあんなに荒く、口も悪く人間もあまり好きではないし、同族も気に喰わないと言っていますわ」 「戦争があればそのストレスも発散できて、人を食らい栄養を取る事ができる。だからあいつはあんなに好戦的なのか。まったく、お前ら姉妹が敵じゃなくて本当によかった」 「ふふ、貴女ならもしかしたらお姉さまを倒せたかもしれませんわよ?まぁそうしたら私が全力で殺してさしあげますけど」 「四十五勝五十五敗だ。あいつに勝つには戦争をするよりも疲れる。試合でこれなら恐らく戦地じゃ勝てないね」 「そうやって分析できるだけで良き将校ですわよ。私の毒にやられないようにとかしてあげてるこの時も魔術コーティングをしている。私に気付かれないように最小の力でコントロールして」 「はは、バレてたか。ごめんよ、傷つけたくないし、信用してない訳じゃないんだ。ただの用心だよ」 「そういう気配りと安全確認をする貴女。大好きですわ。だから強いし、がさつなお姉さまの隙をつけますのよ?貴女は本当に立派な戦人ね。そうやって、ちゃんと私達を仲間だと思ってくださるから、私達姉妹はとても信頼してますわ」 「なんだか照れるな……ありがとう」 お互いの過去をあまり詮索しないように、話をして。お互いの事を信頼し合う二人に笑みが零れた。
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