運命の闘技

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クシュラは両手をユーリの頬に添えるとまた瞳を見つめた。 「この瞳があれば、きっと私の代わりにみんなを守れるよ。だから私を殺してその役目を果たしてくれる?私を愛してるなら……楽にして」 「クシュラ……ならそうするから。君の代わりにみんなを守るから……側にいてほしい。何もしなくてもいいから。僕の心の支えになってくれ」 「……それじゃあダメなんだよユーリ。分かってよ……お願い……分かって」 泣きながらそうずっと願う彼女は切実な思い。 積み重なっていた苦しみがもう耐えられない。 ヴィエラやクジュンはそれが分かっていた。 ヴィエラはそれを考え、落ち込む。 「私では……あいつの代わりになれないのか」 「なれないわけではありません。なれたとしてもせいぜい十年程。それではベスカリアを守りきれないのですよヴィエラ」 「……あいつ一人に頼りすぎた」 「そうですわ。お姉さま一人が世界の脅威。ベスカリアの最大の抑止力。今お姉さまがいなくなったらきっと他国からの侵攻が増えるでしょう。それだけじゃなく竜国からも介入される……」 ベスカリアという存在は長きにわたりクシュラが守ってきた。ずっと一人でその強さで他国からの侵攻を防ぎ、クシュロブの娘として竜国の介入を阻止していた。 度重なる戦争。降り積もる憎悪。 侵攻に対する報復による虐殺、侵略。 全てがクシュラによって行われた。 だから今でも世界各国からベスカリアは憎まれ、クシュラ本人も恨まれている。 ここに集いし同盟国も、ごく一部にしか過ぎず、圧倒的に憎しみをもつ国の方が多いのだ。
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