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こんな残酷で地獄のような思いをするのが分かっていたら罪を重ねはしなかった。こんなにも後悔する事になるとは捕まる前は思いもしなかった。
そして目の前にある明確な死がこれほどにも怖いものだとは。ただ終わったら涙が流れるだけだった。
「何…?泣いてんの?」
「自分に後悔してます。こんなにも辛いなら、犯罪を犯さなかったと」
彼は自然に自分の事を話した。妻が不倫をしていて、問いただすと開き直り侮辱された事。それに怒り狂い殺してしまったことを。
その罪から逃げていた時、強盗集団に匿ってもらい仲間になったことも。
その罪は幾つもの層になり、もはや死ぬしか許されないものになっていた。
そうなった自分に後悔していた。
それを聞いたクジュンは男に股がった。
「へぇ……そうなんだ。私がそうされたらきっと同じように殺すね」
何か同情しているクジュン。気がつけば怒りは収まり、その男の話をじっくり聞いていた。
「お前、本当に話しただけだね。生きたい、なんとかして生き延びようとしない。私に媚びないね」
「死を目の前にして、罪しかないと分かってしまったからもういいです。楽に死なせてくれるならそれが嬉しい」
「……最後に死ぬならどっちがいい?キスで終わるかセックスして終わるか」
「……キスがいい」
ずっと地下に捕らえられた汚い囚人でも髪をかき分け、優しく頬を撫でた。
そして、そと唇を近づけた。
「……セックスを選んでたら苦しんで死んでたから面白かったんだけどなぁ。お前、最後にまともになれたじゃん。安心して死にな、ちゃんと墓を作ってやる」
そう囁くてキスをして、舌を絡ませた。
兵士達からそれを終わりの幸福と言われている。
気に入られて、クジュンに楽に殺してもらえるだけでなく、最後にキスまでしてもらえるのだから。そして眠るように息を引き取り、城の裏手にある墓地に名を刻んでもらえるのだから。
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