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今回のライブは、初めてすごく良い席が取れた。前から3列目の中央辺り。
これは間違いなく神席だ。
日浦 陽人。 通称『アキ』
それが我が『推し』だ。
真っ直ぐに客席を見据える意志の強そうな大きな瞳。
シャープな鼻筋。
口角の上がった形の良い唇から零れる、甘い歌声。
それを拾うマイクを持つのは、顔の小ささに対比する大きな手。
その骨ばった手の甲。
栗色の長めの髪が彼のダンスに乗って流れを作りながら揺れるのも、
それによって普段髪に隠れている耳や額、首筋までもがチラチラと見えるのも、
頬や首の色っぽいホクロも……
…いや、流石にそれは、どこにホクロがあるのかも、自分が熟知しているから見えるような気がするんだろうけど。
何しろ靴紐ですら、肉眼でちゃんと認識できるレベルだったのだ。
なのに、それに靄がかかったように、一瞬にして視界がぼやけた。
…何故?!
眼鏡がない!?
私の眼鏡、どこ行った?!
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