65 失うのが怖いんです ※

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65 失うのが怖いんです ※

 スルスルとあっという間に服を脱がされ、久しぶりに肌を合わせる。  気持ちいい……。  幸福感でいっぱいで、涙があふれてきた。  一週間ぶりの冬磨の熱。また幸せすぎて震えが止まらない。 「……ぁっ……っ、ん……っ……」  どこにキスされても、どこをさわられても、全身がビクビクと震えた。 「かわい……天音。震えてるお前……すげぇクる」  「……ぁ……っ……、とぉ……ま……っ、そこ……」 「お前、ここ弱いよな」 「ぁぁ……っ……っ」  冬磨の唇と指先が、もう知り尽くした俺の敏感なところを執拗に攻める。  あまりの気持ちよさに背中が仰け反り、悲鳴に近い声を何度も上げた。  冬磨の愛撫がいつまでも終わらない。身体の愛撫から唇へのキス、そしてまた身体へと戻っていく。  繋がることよりも、もっとふれていたい、ふれられたい。俺がそう思うのと同じように冬磨も思ってくれてるのかな。そう感じてすごくすごく幸せになった。  はち切れそうなほど限界になった冬磨のものがやっと中に入ってきたとき、俺はもう愛撫だけでぐったりとしていた。 「ぁぁ……っ、……ン……、とぉ……ま……っ……」 「好きだよ、天音……天音……っ」 「すき…………すきぃ……っ、と……まぁ……っ、んぅ……」  冬磨が唇をふさいで、死ぬほど優しいキスをする。  冬磨の瞳が痛いほど俺を好きだと訴えているように見える。  その瞳に見つめられながら、キスをしながら、大好きな冬磨と繋がる。  幸せな快感が全身をつらぬいて、もうどうにかなってしまいそうだった。 「とぉ……ま……っ、……ぁ……っ……」 「天音、可愛い……」    冬磨の動きは本当にいつも優しい。ゆっくりゆっくり俺のすべてを溶かしていく。  もっと動いてもいいよ、俺がそう言っても、いつも冬磨は笑うだけ。  ゆっくり中を愛されて、頭の芯まで甘くとろけてしまう。  全身が冬磨で満たされていく。  冬磨に抱かれると、幸せの涙があふれて止まらなくなる。 「俺が好きって瞳で泣かれると……ほんとやばい」 「……すき……とぉま……」 「ん、好きだよ、天音。お前だけが好きだ。天音は特別」  天音は特別。  何度も聞いたその言葉。でも、言われてばかりで冬磨には言ったことがないと、今思い至った。 「と……ま……」 「ん?」 「とぉまも……特別……。おれの……特別……」 「あ、天音……っ、ほんと……心臓止まるって……」  あー可愛い、という言葉と一緒に奥をズンと深く突かれた。 「んあぁ……っ……!」  そしてまた、優しくゆっくりと中を擦られる。  ときどき動きを止めて、とろけるようなキスをする。  好きの気持ちが冬磨の全身から流れてくる気がした。 「ぁ……っ……、きも……ち……っ……、んっ……と……ま……っ……」 「天音、お前の声……ほんとやばい。瞳もやばい。全部……やばい」 「とぉ……ま、も……きもちぃ……?」 「ん、最高。……イかないように……っ、はぁ……もう必死」  と、冬磨が気持ちよさそうに顔をゆがめる。  その瞬間、ぶるっと身体が震えた。 「ば……っ、お前っ、締めつけんな……って、必死だっつったろ?」  冬磨が感じてる顔を見るだけで、全身に甘い痺れが走る。  もう気持ちいい以外、なにも考えられなくなる。 「とぉま……っ、も……イク……っ……」 「ん、イこう、一緒に」 「お……おく……」 「うん、奥な?」  いつも、最後の最後に深く奥を何度も突かれる。この瞬間だけは、冬磨が本気で快楽を求めて動く雄になる。もっともっと俺を求めて……冬磨。 「……っ、あぁ……っ、とぉま……っ!」 「は……っ、天音っ!」  イク瞬間、ぎゅうっと冬磨に抱きついた。  冬磨も強く俺を抱き締めてくれて、幸福感でいっぱいになった。  この幸せが、これからもずっとずっと続いてほしい。失いたくない。失うのが怖い。  こんな幸せを覚えてしまったら、もしいつか終わったとき、俺はきっと生きていけない。想像するだけで目の前が真っ暗になる。死ぬほど怖い……。  冬磨にずっとずっと好きでいてもらうためには、どうしたらいいんだろう。   「天音? また怯えてる……どうした?」 「な……なんでも……ない」 「……ほんとお前、嘘下手だよな?」    ビッチ天音を封印してから、嘘が下手だとたびたび言われる。  トラウマという嘘もつけない今は、言い訳も思いつかない。  今度からは、嘘をつくときは演技をしないと……そう思うのに、とっさには動けない。   「あ、演技スイッチ入れようとか思うなよ? 嘘が下手な天音でいて。ずっとそのままのお前でいて。どんなことでも素直に言って。大丈夫だから」 「……っ……と……ま……」  冬磨の優しい言葉に、また涙があふれて流れ出た。  冬磨の指が優しく涙を拭う。 「なんで怯えてた?」 「…………こわ……くて」 「なにが怖い?」 「……とぉま……を……」 「うん?」 「とぉまを……失いたくない……」    素直に伝えると、冬磨が破顔した。   「それ、好きの最上級だな」    好きの……最上級……。   「俺も、お前を失うとか考えたら怖いよ。ずっと怖かった。でも、今はもうそんなこと考えない。なんでかわかるか?」 「……わ……わかんない。なん、で?」  冬磨がとびきりの笑顔で答えた。 「お前が俺を大好きだって、その瞳を見ればわかるから」 「…………っ」 「俺も同じようにお前を見てるつもりなんだけど。伝わらないか?」  俺の頭を撫でながら、そっと唇にキスを落として、冬磨が優しく俺を見つめた。   「……つ……伝わる……っ」 「伝わるだろ?」 「ん……伝わる……」 「好きだよ、天音。愛してる」    ――――愛してる。  冬磨の言葉が頭の中でこだました。  グッと喉の奥が熱くなって、みるみる涙があふれる。 「と、と……ま……っ、おれも……っ」 「うん」 「あ……愛……してる……っ……とぉま……っ」 「うん、愛してるよ、天音」    包み込まれるように冬磨に抱きしめられて、その熱で甘く溶かされるようだった。  
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