35人が本棚に入れています
本棚に追加
焦っていると、やや高めのバリトンが響いた。
「あかりさん、こっちこっち! 天文サークルの説明聞くんだよね。玲香、ちょっと酔ってるみたいだから迎えに行ってあげて」
「須藤くんごめんね。あかりさんは天文サークルに入るんだって。私達が責任持って送るから、安心してね」
続いて綺麗な女性の声がして、華奢な手が男から私を無理矢理に引き剥がす。
その拍子によろけた私の肩を温かい大きな手のひらが受け止めてくれた。
「うちのサークルの新入生がお世話になったみたいだね。女子も多いから、彼女はこちらで介抱するよ」
言葉は穏やかだけど有無を言わせない迫力があって、男は何かゴニョゴニョと言い訳みたいな事を言って逃げた。
「ねえ、この子クスリ使われてない? 少しだけど痙攣してるみたい……」
「すぐに病院に連れて行こう。近くに大きな病院があるから……」
この辺りで私の記憶は途切れている。
ただ温かくて大きな手が私を抱き上げてくれて、もう大丈夫だよという声が優しかったのは良く覚えていた。
最初のコメントを投稿しよう!