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翌朝病院のベッドで目をさますと、枕元で夜を明かしたと思われる両親と警察が待ち構えていた。
どうやらあの男が私に飲ませたのはお酒どころかクスリ入りの飲み物だったらしい。
インカレのイベントサークルだったので他校生である男の名前はわからなかったが、昨晩私をここまで連れてきてくれた男女がちゃんと警察に報告しておいてくれたそうだ。
余罪もあるようで、逮捕は免れないだろうと言っていた。
意識が朦朧としていたので彼らの顔も名前も全く覚えていなかったけれど、警察の人から聞いて天文サークルの部室を訪ねたのはあれから5日後のこと。
弱小サークルだそうで部室棟の隅にあったのだが、迷うより前に声を掛けられた。
「あれ? 君、この間の飲み会の子かな?」
その優しげな声に覚えがあって目をやると、穏やかそうな男性が廊下の先に立っていた。
「もしかして助けてくださった方ですか?」
「あっ……そうだね、あんな状態だったんだから記憶がなくても当然か。もう体は大丈夫?」
こくりと頷いて近付きながら彼の顔をしっかりと見る。
スッキリとした輪郭に柔らかそうな黒髪。
少しだけ眠たげな瞳が綺麗だ。
今まで知り合ったことのない大人の余裕を感じさせる落ち着いた声と表情。
この人、すごくかっこいい……
みっともない姿を見せてしまった恥ずかしさと込み上げた好意が相まって、頬が一気に熱を帯びる。
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